好奇心の轍

脳・心・人工知能といった、よくわからんものを研究するふりをしながら、日々と人生についてつらつらと考えている「たっきー」のブログです。
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2004/04/26 (Mon)

[生活][提案] なぜエアコンの温度設定ボタンは連打されるか

ようやく本格的に初夏の雰囲気になってきた。なかなか暖かくて気持ちいいなーと思いながら仕事にきて作業していると、どうも指先が冷える。おかしいなー、と思って、冷房の設定を見たら、予想通りというか何というか、エアコンがそろって20℃に設定されていた。

もちろん、吹き出し口の配置の問題や個人の温感の違いはどうしようもないもので、冷房の設定は職場ではよく見られるトラブルなわけであるが、僕が言いたいのはそういうことではない。もっと根本的に、どうしてみんな極端な温度設定をするのか、ということが、謎なのである。「なんかあちぃなぁ」と思った人は、エアコンのスイッチの前に来ると、なぜかたいてい温度設定の下ボタンを連打する。「なんかさみぃなぁ」と思った人は、やっぱり上ボタンを連打する。連打すればするだけ不快な状況が早く解消すると誰しもが思い込んでいる気がする。

この背後には根本的な誤解があるように思う。どうも僕には、みんなが、エアコンを20℃に設定すると、エアコンから20℃の空気が出てくると思いこんでいるように見える。大間違いである。20℃の空気が出てくるなんて、エアコンの原理からしてそんなことあるわけがないではないか。

エアコンの原理は、熱ポンプである。基本的に、このポンプはonとoffしかできない*1。ポンプがonのときは、冷媒 (フロンとか) を循環させて、パイプの室内側から熱を汲み出してパイプの室外側に排出する。当然、パイプの室内側は冷えて、室外側は熱くなる。そのままだと熱を汲み出す効率が悪くなるので、冷えたパイプ・熱されたパイプに風を当てることで、連続的に熱を汲み出すことができる。これがエアコンである。

では、温度設定は何のためにあるのか、というと、熱ポンプのon/offを自動で制御するためである。要するに、室温が何℃になったら熱ポンプをonにするか、という設定である。

このことからすぐに、次のことが分かる。つまり、温度設定を何℃にしても、部屋が冷えるスピードは変わらないということである。たとえば、いま部屋が30℃だとしよう。エアコンを28℃に設定した場合と、20℃に設定した場合で、どちらが先に室温が28℃になるか。まったく同時であろう。どちらも熱ポンプをonにすることには変わりないからだ。28℃に到達したときに熱ポンプをoffにするか、onで運転し続けるかという違いでしかない。

つまり、温度設定ボタンは連打しても無駄と思うのだ。下ボタンを連打しても、早く涼しくなりたい気持ちはエアコンには全く伝わっていない。むしろ、涼しくなった後に余計に冷え続けるだけといえる。余計に冷えれば別の誰かが上ボタンを連打するであろう。そうしたらまた暑くなるだけである。

本来は、快適な温度に一度設定してしまえば、エアコンの温度設定を変更する必要はほとんどないはずである。なぜなら、その温度になるように、ポンプのon/offをエアコンが自動的にコントロールするからである。朝、一番に出社したらエアコンが切れていて部屋が暑い、という場合でも、スイッチを入れればよいのであって、温度設定を下げる必要はない。人間がいちいち手を出すからわけがわからなくなるのだ。

もちろん、ある程度の調節は必要である。エアコンが把握している室温は、実際の室温とは多少食い違う傾向がある。特に外が暑い場合や、休日の翌日などで壁や床か暖まっている場合には、窓・壁・人の出入りなどによる熱の侵入量が大きくなり、エアコンのまわりは適温でも部屋全体は暑い、という状態になる可能性はある。しかし、その場合でも、1℃ずらせばほとんど解決する。連打する必要はまったく、これっぽっちも存在しない。

なーんてことを考えているのは僕だけなのだろうか。気がつけばエアコンは20℃になっている。制御と動的システムを研究している理系の研究室でもこの有り様なのだから、ほかのオフィスでは推して知るべし。これを読んで、温度設定ボタンを連打する人が一人でも減れば幸いである。

*1 onとoffの中間にできるポンプもあるだろうが、基本的にonかoffのどっちかと思っていたほうが分かりやすい。たいていのエアコンで設定できる強弱は、風量の強弱であって、ポンプの強弱とは何の関係もない。

本日のコメント(全2件) [コメントを入れる]
nk (2005/06/28 (Tue) 15:16)

感激しました。僕の周りは皆そういう人なんで、僕が原理オタク扱いされてるもんで。
嫁さんには何年も説明し、やっとわかって貰えました。
ある雑誌で読んだのですが、低風状態のほうが冷たい風が出てくる(エバポを通る時間が長いから)というのも本当ですよね?
ただし、部屋全体に行き渡らせるという意味では低風じゃ駄目ですけど。
ただの通りすがりでした。

たっきー (2005/06/28 (Tue) 18:42)

おお、同志が増えてうれしいです (^^)
"低風状態のほうが冷たい風" というのは、確かにエアコンの出口の気温は弱風のほうが下がると思います。室外に輸送される熱量が同じで、空気の量が少なければ、少ない空気がより冷たくなる、ということで。とはいえ、室外機と室内機の温度差が大きくなるので、損失が増えて、室外に輸送される熱量そのものは少なくなるでしょう。つまり、部屋全体に行き渡らせるという意味がなくても(つまり弱風にして扇風機を併用しても)、「強風」よりも冷えず、効率が悪いと思います。ただ、冷風の出口に立ってひとりだけ冷え冷えになりたいのなら弱風がいいですね。

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