好奇心の轍

脳・心・人工知能といった、よくわからんものを研究するふりをしながら、日々と人生についてつらつらと考えている「たっきー」のブログです。
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2004/09/18 (Sat)  

[日常] 非日常の瞬間

土曜日の夕暮れ時、家に近い駅から電車に乗ろうと改札を通り過ぎた時。

ぷるるるるる。

すぐ横からささやかな音が鳴っている。グレーの公衆電話だ。思わず何かの間違いではないかと当たりを見回す。

ぷるるるるる。

たしかにこれが鳴っている。よく見ると液晶画面が真っ白(隣の同型機は「国内専用」と表示している)。誤動作か。メンテモードか。

ぷるるるるる。

横の売店の人は気がつかない。自分のそばにもだれもいない。誰宛の電話なのか。自分が出てもいいのか。そもそもなぜ公衆電話が。

・・・・・・。

切れた・・・。電話機は、何事もなかったかのように「国内専用と表示している。僕はあわてて受話器を取ったが、聞こえるのは「プー」というあの音だけだった。

あれはなんだったのか。あの一瞬に躊躇しなければ何が起こっていたのか。もしかしたらマトリックスに出てくる電話みたいに電子世界の出口だったりするのか。自分がいまここにいるという事実すら、少しだけ疑わしい。

まもなく電車がまいります、という声がホームから聞こえてくる。僕は一度だけあのグレーの電話機を振り返ると、ホームに向かって歩いていった。