好奇心の轍

脳・心・人工知能といった、よくわからんものを研究するふりをしながら、日々と人生についてつらつらと考えている「たっきー」のブログです。
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2004/10/23 (Sat)

[SF][研究] 生命の複雑さ

こんなことを思ったのは池上先生の本を読んだからだ。

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池上先生の研究内容は面白そうだったのだが、今まで触れる機会がたまたまなかった。で、10月から始まった駒場の授業にもぐったら何やら面白そうだったので、本を入手してざっと読んでみた。もちろん、ざっと読むだけで理解できるような本ではないが、その熱い魂のようなものが伝わってきた。

本のテーマは生命の持つ多様性である。多様であること、そのものが生命の原動力であることを、さまざまな数値的シミュレーションを通してこの本はまざまざと示す。

単純で一様な世界は単純で一様な、つまらない結果しか生み出さない。そのうえ、一様な世界は脆い。わずかな環境の変化が原因で滅亡してしまう。

多様性を維持する方法のひとつが、相互作用である。不安定な状態でも相互作用によって維持されるため、多様性が保存される。むしろ、複雑さが結合し、より複雑な形態へと終わりのない進化を見せる。しかし、相互作用を切断すると、不安定な状態が失われてしまう。少ない安定状態だけでは多様性が維持できず、脆くなって崩壊していく。

従来の科学的な考え方では、相互作用を排除したり、多様性を平均化することで研究を成り立たせていた。しかし、それだけでは理解できないことがたくさんあるということを、端的に示しているのだ。

読んで想像したのは、人間の集団がもつ関係性と多様性である。

相互作用を排除した「個」の考え方からは理解できない、「つながり」から来る意味が、人間ひとり一人にあるということだ。「役に立たない人」など存在しないのである。コンピュータと数学を使ってこんなことが示せるなんて、まさに wonder ではないか。

世界中の人達がこのことを理解すれば、戦争もテロも、あるいは差別や自殺もなくなるのではないか。もしかしたら、それはそれで多様性が失われた状態なのかもしれないが・・・。

[日常] それより目の前の研究会

そんなことより目の前の仕事からやっつけないといけないのである。目下は来週金曜の北大での討論会である。心の計算理論とかいってエンドレスで討論しようという企画で、僕は栄えある2番目のプレゼンターなわけだが、まだ実験がうまくいってないという致命的状態。というか、いろいろいじった結果、目標どおりに動作しているのだが、どうも当初の目的から外れたものができてしまったらしい・・・。

どうせ、計算機上で何を作っても「心の研究だ」と主張するのは所詮こじつけなのだが、問題はそのこじつけで何人を納得させられるか、なわけである。できてしまったものは自分でも納得しがたいので、このままでは困るわけだが・・・あと1週間だしなあ。どうしよ。