好奇心の轍

脳・心・人工知能といった、よくわからんものを研究するふりをしながら、日々と人生についてつらつらと考えている「たっきー」のブログです。
カテゴリ一覧:

2004/11/24 (Wed)

[研究][時事] 自閉症と脳の免疫活動

ちょっと古くなってしまったが、自閉症患者の脳でなんらかの炎症が起きており、免疫機構が活発に活動しているというニュース。

Autism Associated With Brain Inflammation (Science Now, アクセス制限あり)

Diana Vargas らが Annals of Neurologyに発表した論文 (Neuroglial activation and neuroinflamation in the brain of patients with autism) によると、11人の自閉症患者(5〜44歳)の死後の脳組織を自閉症がない人のものと比較したら、前者で免疫細胞 (microglia と astroglia) がかなり活発になっていたとのこと。前頭葉 (middle frontal gyrus)、帯状回 (anterior cingulate gyrus)、小脳の3か所の実験でいずれも同様の傾向が見られたが、とくに (自閉症の場合にプルキンエ細胞が減少することで知られる) 小脳での傾向が顕著であったとのこと。

これはけっこう悩ましい。何がって、自閉症が示す脳機能の異常は非常に高レベルな部分にあり、通常の運動や記憶、計算などには影響がないのである。脳損傷やアルツハイマー、パーキンソン病などが示す脳障害とは違うわけであって・・・。いったい何が起きているのか。

論文の著者は、免疫機構の制御で自閉症を改善できる可能性を示唆しているが、もし免疫の異常で自閉症ができるのだとしたら、免疫が攻撃する対象(脳の特定の細胞種とか、特定の伝達物質とかタンパク質とか)はコミュニケーションをつかさどるものであるということになる。ほんとうにそんなもんあるんだろうか。

SF的見方では、「他者」という概念が脳に侵入するのを身体の防衛機構が阻止しているとか考えると面白い。概念に対する免疫機構が存在するなら、相手の免疫を発動させる魔法の一言なんてのもありそうだ。免疫を暴走させれば戦わずして相手を倒せるし。って 4150305412 の世界になってしまう。

なんにしろ想像力がかき立てられる研究であることは間違いない。