脳・心・人工知能といった、よくわからんものを研究するふりをしながら、日々と人生についてつらつらと考えている「たっきー」のブログです。 |
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イトーヨーカドーに買い物にいったら、発芽玄米が置いてあった。最近の健康食品の新しいブームらしい。
しかし、書いてある宣伝文句が怪しい。「話題の栄養素「ギャバ」が白米の10倍!」だそうである。なんでも、脳細胞を沈静化する効果があるとかなんとか。
これって、脳の研究者にはおなじみの神経伝達物質GABAのことではなかろうか。脳細胞同士が通信する時には何種類かの化学物質を使うのだが、興奮性のAMPA、抑制性のGABAといった物質は確かに使われている。しかし、それは伝達元の脳細胞が伝達先の脳細胞に対して、ものすごい狭い範囲で、ものすごい微量を放散するだけで、その効果もミリ秒単位である。
そもそも、ここでいう興奮・抑制というのは、脳細胞の動作を説明する科学的用語であって、脳全体の、人間としての興奮状態・沈静状態とは何の関係もない。人間がリラックスするときには、交感神経が働いて脳波のアルファ波が観測されるわけだが、そのときには個々の脳細胞は活発に興奮したりしているのである。
だいたい、GABAが不足するなんて聞いたことがない。脳細胞は、受け取ったAMPAやGABAの量に基づいて動作するスイッチのようなものである。GABAが不足していたら、スイッチが入りっぱなしになって、そもそもスイッチとしての役を果たさないので、そもそも脳が機能しないのではないか。
もう少し広い範囲に影響する物質である、ドーパミンとかセロトニンなら不足する病気というのがある。しかし、脳血液関門というのがあって、ドーパミンを食べたりして血液中にこうした物質があっても脳には届かないようになっているのであった。そのために、神経科薬の開発では、ドーパミンそのものではなく、脳血液関門を通過した後でドーパミンの原料になるような分子(誘導体)や消費を抑える物質(再取り込み阻害薬)を血眼になって探しているのである。誘導体ではないGABAを直接食べても、ほとんど脳に届かないと思う。
というわけで、脳の沈静化のためにGABAを食べるというのは、なんつーか、免疫に働くからって白血球を食べるのと同じように非科学的だと思うのであるよ。まあ、体内で複雑なプロセスを経て何かしらの効果があるのかもしれないけど、この手の体内合成される物質は、普通に健康な食事を食べてれば問題ないはず。
別に、GABAを持ち出さなくても、発芽玄米にはいいところがいっぱいあるのだし(外皮がやわらかくなっているから栄養の吸収率が高いとか)、わざわざトンデモ食品の仲間入りをしなくてもいいと思うのだけど。
きっと、トンデモ食品の方がみんなお金を出すんだろうね。サプリメント売り場には「美容や健康維持のため」とかいって「DNA(デオキシリボ核酸)」とかがばりばり売ってるし。25万円/月もする成長ホルモンの自己注射なんてものまで流行してるし。「タンパク質」というと「太りそう」と敬遠されるものを、「アミノ酸」と呼び方を変えるだけで売れてるし。
それとも、僕が気づかないようなしっかりした根拠がある話なのかな。誰か教えてください。
おっしゃる通りで、この量では脳内にGABAは入りません。しかし、GABAは末梢で作用すると考えられます。すなわち、末梢の交感神経末端にはGABAレセプターが存在し、そこに作用すると考えられています。当然、精神作用は期待できません。血圧降下作用が主です。
コメントありがとうございます。末梢とは気付きませんでした。勉強になります。しかし、血圧が一時的に下がるぐらいならやはり大騒ぎするほどのものではないですよね。体が少しはリラックスするのかな。案の定というか、あっという間にGABAブームは終わってしまったようですが・・・。